即戦力シニアに企業が熱視線
国民の4人に1人が65歳以上という高齢化社会を迎えた日本。定年後の「第二の人生」も働き続けることを選択するシニアが増え、企業も貴重な即戦力として注目し始めた。第一線で活躍していた時に培ったノウハウや経験が企業価値を高めると、株式市場も期待する。
(中略)
シニアと株式市場は、企業価値の向上という観点から結びつきを強めている。シニアの活躍が上場企業の持つ価値を高め、収益拡大、株価上昇につながる可能性を秘める。三井住友アセットマネジメント株式運用グループの上村孝広シニアファンドマネージャーは「製品の原料の調合方法など製造業を中心にマニュアル化されていない熟練社員のノウハウが企業の強みとなっているケースは多い。こうした社員が高齢化した際にどう処遇するかが市場が企業の成長性を評価する上でのポイントの一つになる」と指摘する。
例えば、JFEホールディングス。傘下のJFEスチールは、13年度からシニア社員を若手技術者の指導に当たらせる制度を導入している。賞与を最大20万円上乗せすることで、シニアの持つ技術力やノウハウを若手に伝授させ、競争力を高めるのが狙いだ。生産設備にトラブルが発生した際の対処には、蓄積された経験がものを言う。トラブルの長期化を回避できれば、収益面でプラスに働く可能性が高い。
(中略)
自分が培った経験をもとに、一気に独立するシニアも多い。顧問として複数の中小企業などに自身の経験やノウハウを提供し、対価を得ることがその一例だ。
(日本経済新聞 電子版 4月16日)
年金支給年齢の引き上げに合わせて正社員の定年を引き上げるだけでなく、シニアの持つノウハウに価値を見出してシニアを雇用するケースが増えてきた。
シニアが蓄積してきたノウハウは社会の資産であり、この有効活用は、労働人口が減少している日本にとって、達成すべき差し迫った課題だ。シニアが、その能力を社内に残って後輩に伝えるもよし、社外に出て複数の中小企業の経営を支援するもよし。ともかく、社会全体でシニアのノウハウ活用の機会を増やしていくことが重要だ。
シニアのノウハウの活用が一般化すれば、その需要は増え、処遇も改善する。その結果、安い報酬なら働かない方がよいと考えているシニアも労働市場に再び戻ってくる。市場の拡大は、シニアを年齢ではなく、持っているノウハウの価値で客観的に評価し、その価値に見合った報酬を提供するところから始まる。