人材不足 社会医療法人「董仙会」が定年撤廃
七十歳まで働く機会の確保を事業主の努力義務と位置付けた改正高年齢者雇用安定法が四月、施行された。七尾市富岡町の恵寿(けいじゅ)総合病院などを運営する社会医療法人財団董仙会(とうせんかい)は今月、定年制度を撤廃し、六十歳以降も継続して正職員として働ける体制を整備した。常に人手不足に悩む医療や介護の現場で、すでに六十歳以上の労働力は不可欠。少子高齢化で働き手が減る中、意欲ある高齢者が活躍できる労働環境を確保する取り組みとして、軌道に乗るか注目される。
(中日新聞 7月27日)
医療の現場では、高齢の職員の数が増えている。国家資格が必要な職種が多いだけに、供給が限られ人手不足は深刻だ。加えて、新型コロナウイルス対応で需要も増加し、人材確保はより厳しさを増してきた。今や、若年層だけでなく、高齢者層でも人材の奪い合いの様相を呈している。
こうした中、定年を廃止し、60歳以上の職員を安定的に確保しようとする医療機関も増えてきた。医師は年齢に関係なく仕事を続けることも多いが、看護師や介護職は定年を機に、退職したり、転職したりする人が一定数いる。60歳を過ぎても同様に働いてもらうには、再雇用よりも定年廃止の方がよい。
ただ、高齢になると職員の働き方へのニーズは多様化する。60歳で退職金をもらうことを前提に生活設計をしている人や、60歳以降は勤務時間を減らしたいと思っている人など、求めることは様々だ。この点、董仙会は、60歳になると確定拠出年金を解約して受け取れるようにするなど、職員の要望を取り入れた柔軟な制度を設計した。多くの職員に受け入れてもらうには、こうした工夫は大切だ。