60歳以降は年収激減、過去の話か-大企業でシニア社員の待遇向上進む
年収は激減、かつての部下が上司に-。60歳を超えてそれまで勤めた企業で働き続ける場合、収入や役職などの待遇面が悪化することが多かった。今年の春季労使交渉(春闘)で大手企業を中心に記録的な水準の賃上げ回答が相次ぐ中、シニア社員に対する処遇の改善も進んでおり、ネガティブなイメージは過去のものとなるかもしれない。
(中略)
シニア社員の処遇に関して、スズキは持続的な成長を目指すための施策の一つとして60歳を過ぎても体力や環境などに問題がなければ60歳時点の業務と給与を維持することを掲げた。日産自動車や日野自動車などは高齢の従業員に対しても一般組合員に準じたレベルの賃上げを実施する。
(Bloomberg 3月15日)
トヨタを始めとして、スズキや日産、日野など自動車業界全体でシニア社員の処遇改善が進んでいる。年齢に関わらず有用な人材の流出を抑えて活用するというのが今の日本の大企業全体のトレンドではあるが、特に、自動車業界では、国内製造拠点の維持という観点からも、シニアの活用が重要になっている。
今後、日米金利差の縮小に伴って円高になることはあっても、かつてのような1ドル100円を切るような極端な円高にはならないとすれば、製造業が製造拠点の国内回帰に動くのは合理的な判断だ。その製造業の中でも、自動車業界は、最も大きな製造規模を国内に持っているだけに、製造力の維持、強化のために最も多くの人員と製造ノウハウを国内に確保したい業界でもある。エンジン車からEV等への転換に伴うリストラは必要なものの、シニアの処遇改善を進めて現役として活躍し続ける環境を整える動きは、日本の自動車業界の中で今後も続くだろう。