トヨタがシニア活用を強化へ
トヨタ自動車が60歳以上のシニア人材の活用をより強化する検討に入った。現行の定年再雇用制度(以下、再雇用制度)をより柔軟に運用し、役割や貢献に応じて処遇を引き上げる。さらに、再雇用制度を終えた65歳以上の人材の雇用についても検討する。
現在、同社では60歳以上の人材活用で処遇に大きな差があるという。例えば、部長職に就いている社員は現役時と同水準の給与を維持している一方で、多くの社員のそれは現役時から大幅に下がる。このギャップの大きさが一因となり、現行では2割ほどの人材が再雇用制度を利用せずに60歳で退職している。その後も、1年ごとの契約の度に数%の人材が契約更新せずに去っているのが現状という。
(日経クロステック 3月11日)
60歳以上の従業員が退職することは、企業にとって悪いこととは限らない。企業によっては、事業は黒字でも、40歳以上の従業員に希望退職者を募るところもある。高齢の従業員の人件費を削減して、若い従業員の新規採用と待遇改善を進めるのも経営戦略の選択肢のひとつだ。一方、年齢に関わらず、会社にとって有用な人材が退職することは、会社にとって不利益になる。その従業員が60歳以上であっても、事業にとって必要な人材であれば、会社に残って活躍して欲しい、というのが現場の事業部門の本音だ。
したがって、トヨタの新たな人事制度の目標は、60歳で退職する人や再雇用契約を更新しない人を減らすことではなく、会社を去っていく人の中に、会社が必要とする人材が含まれないようにすることにある。その達成には、本社の人事部門が全社共通のルールの下に画一的な運用をする制度ではなく、各事業部門が現場の必要性に応じて柔軟に運用できる人事制度の導入が重要だ。その人が必要かどうかは、現場の事業部門でなければ分からない。