65歳過ぎても現役、退職を遅らせる米国人が増加

米国では、高齢者が労働市場にとどまる傾向が強まっている。米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターは先月、米国で65歳以上の労働者の数が過去35年間でほぼ倍増したとの調査結果を公表した。昨年は65歳以上の米国人の約5人に1人が雇用されていたという。
過去数十年と比較すると、高齢者の労働時間は伸び、賃金も高くなっていた。高齢労働者の62%が正社員で、1987年から15%増加。65歳以上の一般的な労働者の時給は当時13ドル(約1850円)だったが、2022年には22ドル(約3120円)となった。米退職者協会(AARP)の報告によると、定年退職年齢の労働者の平均所得は2019年時点で7万8000ドル(約1100万円)で、1985年から63%増えた。
(Forbes JAPAN 1月3日)

足元では、米国の高齢者は、新型コロナウイルスによるロックダウン以降、労働市場になかなか戻ってきていない。しかし、長期的に見ると、高齢者が労働市場に留まる傾向が続いている。日本ほどではないものの米国も少子高齢化のトレンドにあることから働く高齢者が増えるのは自然な流れだ。

ただ、高齢者で正社員である割合が増え、時給も増加していることは、高齢の求職者だけでなく、高齢者への求人も増えていることを示唆している。22ドル(約3120円)という時給は、日本では、働き盛りの若年層でも難しいかもしれない。

もっとも、米国の若年層は、さらに高い時給を得ているので、高齢者の給与が相対的に低いのは、日米共通の現象だ。違いがあるのは、米国では特定の年齢で給与が極端に低くなることがない点。日本のように、定年後に年収が一律4割減になることはない。給与を決めるのは、本人の能力と労働市場での需給関係だ。この原則は、高齢労働者が増加する中、米国の労働市場が有効な調整力を発揮するのに重要な役割を果たしている。これによって、求人側や求職側を含め、全ての市場参加者が相場観を共有することが可能となる。