日本では高齢化がインフレ抑制につながった
ウォール街では、アメリカのインフレ率が連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%にはなかなか下がらないと予想する向きもあるが、ユーライゾン・SLJキャピタル(Eurizon SLJ Capital)は、それとは逆のことを指摘している。日本では高齢化がインフレ抑制につながったことを例に挙げ、世界最大の経済大国であるアメリカでも同様のことが起こるだろうというのだ。
(BUSINESS INSIDER 12月11日)
一般的に、労働力人口の増加は経済成長とインフレをもたらし、労働力人口の減少は経済の停滞とデフレを誘引する。日本では、人口の多い団塊の世代が10~26歳の頃に高度経済成長となり、40歳前後にバブル期を迎えたが、バブル崩壊後は30年にわたる長期のデフレ経済に入った。もし、少子化が起きず、団塊の世代以降も出生率が維持できていたなら、デフレ状態は長くは続かなかったに違いない。
アメリカは、出生率が日本よりも高く、移民の数も多いが、人口動態のトレンドが少子高齢化にあることは日本と同じだ。アメリカ経済もゆっくりとではあるが日本化の道を歩んでいる。ただ、アメリカには日本にはない経済のダイナミズムがある。たとえば、少子高齢化による経済低迷を打開するには、少子化を食い止めるか、移民を増やすか、労働生産性を向上させるかだが、それらの全てにおいてアメリカは日本を凌駕してきた。特に、この1年の生成AIによる生産性の向上は著しい。技術革新とそれを経営に取り入れるスピードが、今後高齢化が進むアメリカの日本化を食い止める鍵となる。