高齢者の労災、安全に働ける職場増やしたい
高齢者に社会の支え手として長く活躍してもらうのであれば、国や企業は、安全に働ける環境を整える必要がある。
(中略)
厚生労働省によると、21年に労災で死傷した60歳以上の人は3万8574人で、17年と比べて約1・3倍に増えた。
高齢者の労災は、製造業や小売業での発生が目立つ。例えば、工場や飲食店の通路で滑って転んだり、階段を踏み外して転落したりといった事例だ。加齢に伴う視力や平衡感覚の衰えが、事故の原因となっているようだ。
(読売新聞 10月24日)
たびたび話題になる高齢者の労災だが、残念ながら増加傾向が続いている。高齢者の就業者が増えているので、やむを得ない部分もあるが、高齢者の労災による死傷者はそれ以上の割合で増加した。高齢者の安全確保のため、段差をなくしたり、手摺りをつけたりと様々な工夫をしている事業所もあるが、多くの事業所では、今までの作業環境のまま人手不足を補うために高齢者を雇用しているのが現状だ。このままでは、今後も高齢者の労災が後を絶たないことが危惧される。
一般に、高齢者向けの労災対策は高齢者以外の若い従業員の安全確保にも役立つ。その点を考慮すれば、高齢者を雇用する企業に対してのみ、行政が高齢者向けの労災対策を支援することよりも、すべての企業に対して、法令が課す安全確保義務を強化する方が効果的だ。多くの企業が高齢者を含めた従業員の労災対策を充実させれば、企業が年齢に関係なく高齢者を雇用する機会も拡大するだろう。