遺族年金頼み、家計の余裕乏しく 就労や長期運用で備え

東京都内に住む70代の女性Aさんは今春、年金事務所を訪れた。元会社員だった夫が亡くなり、自分が受け取る公的年金がどう変わるかを具体的に知りたかったからだ。
(中略)
遺族年金は夫婦どちらかが先に亡くなった場合、家族の生活を保障する制度だ。2つの仕組みがあり、1つが会社員や公務員など厚生年金に加入していた人の家族が対象の遺族厚生年金。もう一つが自営業者など国民年金の加入者が死亡したとき18歳以下の子がいる配偶者かその子が受け取れる遺族基礎年金で、支給期間は子が18歳になる年度末までとなっている。
(日本経済新聞 8月21日)

自分と配偶者との老齢厚生年金の差額で、遺族厚生年金のもらい方は変わる。最も多いのは、妻は、夫の扶養家族で老齢厚生年金がないか、扶養家族でなくても収入が少なく老齢基礎年金が夫に比べて少ないケースだ。このような場合、夫が先に亡くなると、妻は夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3を遺族厚生年金として受け取れる。自身の年金が少ない妻にとっては貴重な収入源だ。ただ、一般的には、4分の3で遺族年金では、生活を維持するのは難しい。夫が亡くなって減る支出は、食費や趣味への出費ぐらいで、光熱費や家屋の維持費などの固定費は、さほど変わらない。

「就労や長期運用で備え」ることができればよいが、夫が亡くなってから、残された妻が就労や資産運用を始めるのは難しいだろう。夫婦が元気なうちから、どちらかが亡くなった後のことを想定して、生活設計を立てておく必要がある。特に、自営業者は、遺族年金がないだけに、妻の国民年金基金の掛け金を十分に支払っておくなど、現役時代から長期的な視点に立って老後に備えるべきだ。