シニアも青春18きっぷで節約旅行、ユースホステルも活用

東京都内に住む会社員の男性(56)は「若いころはリュックサックをかついで気の向くままに旅をしていた」という。年齢と共に会社での責任が重くなり、子育ても忙しくなって旅行する機会も減った。老後は「バックパッカー」に戻りたいと思うが、久しぶりの節約旅行には不安も多い。
節約旅行といえば、全国のJR線の普通列車やBRT(バス高速輸送システム)、JR西日本宮島フェリーが1日あたり2410円で乗り放題になる「青春18きっぷ」が有名だ。「青春」と銘打っているが、利用に年齢制限はないので、シニアの節約旅行の強い味方になる。
(日本経済新聞 7月27日)

青春18きっぷは、その名のとおり、大学生や高校生をターゲットとしたトクトクきっぷだ。利用期間も春休み、夏休み、冬休みの期間に合わせてある。しかし、利用者に年齢制限はないので、時間に余裕のあるシニアも使うことができる。シニア向けには、フルムーン夫婦グリーンパスというトクトクきっぷがあるが、こちらには、夫婦の年齢の合計が88歳以上という年齢制限があり、価格は5日間84,330円と青春18きっぷに比べて高い。長時間電車に乗ることが苦にならず、むしろ、楽しめる人には、青春18きっぷの方がお勧めだ。

同様に、食事や設備に豪華さを求めない旅行なら、ユースホステルのコスト・パフォーマンスは高い。同宿者との交流など一般の宿泊施設では得られない付加価値も提供してくれる。観光地の山小屋のような存在だ。

このように若者をターゲットにしたサービスを利用するシニアが増えている背景には、年齢によって顧客をセグメント化するという従来のマーケティング手法が、市場の実態に合わなくなってきていることがある。今後のマーケティングでは、年齢や性別のような属性でセグメント化し、各セグメントの共通ニーズに応えるという従来のやり方ではなく、同じニーズを持った顧客層を抽出してセグメント化するという逆方向のアプローチも必要だ。そうすれば、青春18きっぷやユースホステルという若者をターゲットにした名称も別のものに変わっていくのかもしれない。