高齢者が活躍する場、各地に広がる
元気で過ごしたいと考える高齢者が活躍する「出番と居場所」作りが各地で進んでいる。健康維持にとどまらず、使命や責任を意識してもらうことで、充実感があり、意欲的な生活を送れるという好循環を目指している。
(中略)
兵庫県南あわじ市は、60歳以上の市民を対象に、ボランティアに参加すると地域商品券と交換できる「おもいやりポイント」の制度を導入した。「人生100年時代を元気に過ごしてもらおう」(生涯活躍推進室)という狙いだ。市内の高齢者施設や保育園など約60施設で、清掃作業や本の読み聞かせといった活動をすると、内容に応じて1時間あたり200ポイントか400ポイントを付与している。1000ポイントごとに、市内約100店舗での買い物などに使える地域商品券に交換できる仕組みだ。
(yomiDr. 7月13日)
無償のボランティアでも一定の人数は集まるが、わずかであっても報酬があれば参加する層は広がる。南あわじ市の場合、「おもいやりポイント」は1ポイント=1円で使うことができる。1時間あたり200ポイントか400ポイントをもらえるということは、時給200円か400円のパートをしているのと同じだ。兵庫県の最低賃金である時給928円に比べると低いが、参加する高齢者にとっては励みになっている。仕事を依頼する企業や組織にとっても、最低賃金の半額以下で対応してもらえるのはありがたい。
ただ、この制度を使って格安で請け負う業務の範囲は、ある程度限定すべきだ。60歳以上の人になら、どのような業務も時給200円で依頼できるとなると、最低賃金制度の存在意義が問われる。ボランティアという位置づけにして最低賃金以下の就労を自治体が率先して促進するのは、好ましいことではない。たとえば、本の読み聞かせのようになくても困らないがあると望ましい活動をボランティアとし、清掃作業のように業務遂行に不可欠な作業は通常の就労として最低賃金を支払う、というのもひとつの解だ。