iDeCo、受給時期に一工夫 退職金とずらし節税効果
税制優遇を受けながら老後資金を作る個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)。掛け金が所得・住民税の計算対象からはずれ、運用中は利益が非課税となるため効率的に資産を増やせる。加入可能年齢が5月から65歳未満までへ5年延び、岸田政権はさらなる延長も検討し始めた。ただ受給時はそれまでの運用益も含めた受給額全体が原則として課税対象で、もらい方次第で税・社会保険料を引いた手取りは大きく変わる。
(日本経済新聞 6月20日)
一般的に言って、節税効果という点では、イデコと退職金を別々のタイミングで受け取る方が良い。それぞれの受け取りに対して退職所得控除を使うことができ、かつ、年間の所得合計も下がるので所得税の税率が低くなる。イデコの加入可能年齢が65歳未満に延長されたことに伴い、今後は、60歳で退職金を受け取り、イデコは65歳で受け取る人が増えるだろう。イデコで運用益が期待できるなら、運用期間を長くした方が、受取額も増える。
ただ、足元の世界経済は、インフレの高進に伴う金利上昇により、世界的な景気後退が懸念される局面だ。株を始めとするリスク資産は、今年に入って既にかなり下落しているが、もし、本格的な景気後退に入れば、さらに値下がりする。イデコで運用益を確保するのは、なかなか厳しい。このような経済状況では、イデコを早めに受け取り、嵐が過ぎ去るまで現金で保有するのも選択肢のひとつだ。リスク資産の価額は年間20%程度の増減があることも珍しくないだけに、注意しておく必要がある。