「働かない1億人」コロナが映した老いる米国
さまざまな経済統計が新型コロナウイルスによる乱高下から落ち着き始めた米国で、元の姿と異なったままの「断層」が目立ち始めた。その一つが職探しをしない非労働力人口だ。コロナ前から400万人ほど増えたまま、働かない米国人はざっと1億人に上る。その存在は米国経済の「コロナ後」の停滞を示唆している。
(中略)
カンザスシティー連銀は5月に出したリポートで、その原因追究に挑んだ。移民の減少や人口構成の変化など様々な要因を取り除いたところ、浮かび上がったのが働かなくなった「65歳以上」の存在だった。
(日本経済新聞 6月4日)
日本でも、新型コロナウイルスの影響で仕事を辞めた高齢者がなかなか労働市場に戻ってこないことが指摘されているが、米国でも同様だ。このため、米国では、経済再開に伴い、日本以上の人手不足に直面し、賃金の上昇がさらなるインフレ高進の要因の一つにもなっている。政府が企業に賃上げを要請している日本とは逆の状況のようにも見えるが、物価高騰に賃金上昇が追いつかず、実質賃金が目減りしている点は同じだ。エネルギー資源、原材料、労働力の供給制約は、日米共通の問題となってきた。
もっとも、米国の高齢者の一部が働こうとしないのは、新型コロナウイルス対策の給付金や株価上昇による資産拡大などによって、しばらくは働かなくても生活できるから、というのも理由のひとつだ。足元では、給付金の支給は既に終了し、株価もFRBの金融引き締めの影響で下がってきた。今後は、一旦離職していた高齢者も労働市場に戻ってくる可能性はある。