労災死の4割超が高齢者に、危険できつい仕事担うシニアたち

2021年に労働災害で亡くなった60歳以上の高齢者が360人に達し、労災死亡者全体(831人)の43・3%を占めたことが、本紙の調べで分かった。過去最高の比率で4割を超えたのは初めて。工事現場など若い人が敬遠しがちな危険できつい仕事を担う高齢者が増えている現状と、安全対策の遅れが鮮明になった。
(東京新聞 5月30日)

労災死亡者全体の数が減少する中、労災死亡者に高齢者が占める割合が増えてきた。この記事では、高齢者が比較的危険な仕事に従事するようになったことと、安全対策が遅れていることがその要因だと指摘されている。

高齢であることと死亡に至る事故に見舞われることとの因果関係は、さらに事例データを分析する必要があるが、少なくとも相関関係はあるようだ。たとえば、工事現場の警備員が突っ込んできた車にはねられて死亡した例などが報告されている。この場合、もし、反射神経の良い若者であったら避けることができたかもしれない。統計的に見て、高齢者の方が死亡事故につながる確率が高そうだというのは想像できる。建設現場の墜落事故も同様だ。

こうした事故を起こさないための対策としては、高齢者を危険な業務に従事させないというのもひとつだが、それでは、高齢者の労働力の活用は進まない。むしろ、高齢者でも安全に作業ができる環境を整備すべきだ。たとえば、車の自動運転の技術を応用すれば、警備員に衝突しそうな車を識別して衝突前に警告を発することは可能だ。国は、安全管理規制の強化だけではなく、安全性向上のための技術革新とその普及を推進する必要がある。