人生100年時代、高齢者専門の不動産会社が挑む
世界有数の長寿国である日本。令和2年の平均寿命は男性(81・64歳)、女性(87・74歳)ともに過去最高を更新し、「人生100年時代」が現実味を帯びる。一方で、未婚や少子化も進み、高齢化を取り巻く課題が浮上する中、今後増えるとみられる高齢者の賃貸契約の壁もその一つだ。孤独死を懸念し交渉が難航する事例もあり、60歳以上の客を専門とする不動産会社も登場。
(中略)
京都市内の賃貸物件を紹介する店舗「下鴨ひろば」(京都市左京区)には、物件情報が掲示され、店内に入ると、従業員から明るい声がかかる。賃貸物件を扱う店舗では、ありふれた光景だが、この店は対象とする客が60歳以上、従業員も全員60歳以上が占める「高齢者専用」だ。
(産経新聞 5月16日)
賃貸住宅のオーナーが高齢者との賃貸契約を敬遠するのは、今に始まったことではない。昔から、高齢者お断りとは明示していないものの、仲介する不動産業者に高齢者を避けるように依頼することはよくある。75歳以上の後期高齢者になると賃貸物件を探すのが難しくなるが、60代でも若い世代に比べれば条件は厳しい。このため、今までは都心や駅から遠いなど需要が少ない物件に高齢者が入居することが多かった。しかし、高齢者の数が増えると、そうした物件でも見つからない高齢者も出てくる。何らかの社会的な対応が必要だ。
「下鴨ひろば」では、孤独死などでオーナー側の負担となるリスクを低減するため、国土交通省の新たなガイドラインに従って入居契約時に残置物の処理を任せる委任状を受け取るなどしている他、高齢者に遺言状の書き方講座などの支援も行っている。こうした高齢者向け不動産サービスは、今後、高齢化に伴い需要が拡大していく。そこでは、60歳以上が活躍する「下鴨ひろば」がそうであるように高齢者の雇用も生まれる。不動産業界でも高齢者が高齢者を支援する循環型経済が成長することを期待したい。