副業や休暇増、学び後押し 企業価値高める工夫広がる
企業が「自ら学ぶ」人材の育成を持続的成長の原動力と位置づけ、学びの機会を増やす副業や週休3日制の導入を進めている。資格取得を支援したり社内研修を充実させたりする企業も増えてきた。学び直しは若手に限らずシニア人材にとっても必要性や効果が認識され始めている。労働生産性の改善や働き手のやりがい向上が重視される中、取り組みが今後も広がりそうだ。
(日本経済新聞 3月22日)
この記事では、日本の労働生産性について、「生産性が低いのは円滑な労働移動(衰退産業から成長分野への転職)ができていないからだ」という日本総合研究所の研究員の見解を紹介している。この見解は正しい。ただ、労働移動ができない要因として、「①ジョブ型雇用の普及②(転職先の)職業情報の見える化③リカレント教育――の3点での遅れ」を挙げているが、これは十分ではない。日本において労働移動が円滑でないのは、主に衰退産業が淘汰されずに存続しているからだ。労働生産性が低く衰退した産業を国の補助金で支えれば、その産業の雇用は守られ成長産業への労働移動は起きない。同様に、企業内でも、衰退した事業から撤退するのはハードルが高い。一般に、衰退事業の責任者は、最後まで、事業撤退に抵抗するものだ。
そんな日本企業にあって、副業や休暇増という働き方の選択肢が広まってきたことは、衰退事業からの労働移動を促進する上で効果がある。退職されては困るものの週5日の仕事量がない従業員が、週休3日で副業からも収入を得てくれるのであれば、その従業員の企業内の労働生産性は向上する。社会的に見ても、副業に時間を費やした分、労働移動が行われていることになり、社会全体の労働生産性も向上する。副業が成功して本業になるなら、さらに、労働移動が促進されて社会的には望ましい。副業や週休3日制の導入は、従業員の学びの機会を増やすだけでなく、企業にとっても、社会にとってもメリットがある。