ニーズ高まるシニア雇用に影落とす「難聴」
定年後も元気に働こうと考えるアクティブシニアの雇用に「難聴」が影を落としている。65歳以上の就業者は全国で1000万人に迫りつつあり、企業にとっては貴重な戦力。一方、聞こえづらさで仕事を思うように進められないと悩む高齢者も多く、聴覚にまつわる問題の対応は急務だ。ただ、日本では補聴器の普及が海外よりも遅れているという事情もある。背景には「耳が遠い」ことへのマイナスイメージの強さも指摘され、眼鏡のような手頃な価格とファッション性を兼ね備えた新ジャンルの聴覚サポート器具には商機も見出されている。
(SankeiBiz 3月4日)
高齢になっても仕事をする上で重要なのは、目と耳の能力だ。老眼は50を過ぎれば誰でもなると思われている一方で、難聴はかなり高齢にならないと症状が出ないというイメージがあって、補聴器を使ってまで仕事を続けたいと思わない人も多い。
しかし、この記事によれば、「50歳でも3割が発症。60代では4割が『聞こえづらさ』を感じている」のが実態だ。50代、60代にとって難聴は特別なことではない。既存の補聴器は、老眼鏡と違って、管理医療機器だけに価格が高いし、見た目も老人向きだが、価格とデザインを改善させれば、補聴器の利用が広がり、難聴を理由に退職する人は少なくなるのかもしれない。
この記事では、日米韓共同のスタートアップ企業「オリーブユニオン」が販売しているワイヤレスイヤホン型の補聴器が紹介されている。この補聴器は、スマートフォンアプリを使って利用者自身が音を最適化できるようにして、調整にかかるコストを低減させ、低価格を実現した。デザインも通常のイヤホンと見分けが付かない。シャープも同様のコンセプトの商品を21年に発売している。こうした新製品が普及すれば、補聴器の利用は特別なことではなくなり、高齢者の雇用機会も広がることが期待される。
ただ、スマートフォンアプリを使って自分で音の調整をするのは、ある程度、デジタルの世界になじみがないと難しい。筆者も90代の母のためにシャープのワイヤレスイヤホン型補聴器を購入してみたが、アプリの操作は誰かが手伝う必要があった。このユーザインターフェースには、まだ改善の余地がある。