転職後年収、50代上昇 ミドル人気に見る利害の一致

転職市場で50代の初年度年収が上昇している。中途採用の人材としては敬遠されがちな年齢層だが、転職市場の主力の30代前半までの人材を採用できない中堅・中小企業がベテランの大手企業出身者に食指を動かす。若年層を中心とした人手不足という労働市場の構造的な問題もミドル世代の求職者と即戦力を求める企業の利害を一致させ、転職市場の流動性を加速させる動力となっている。

(日本経済新聞 2月16日)

50代の転職後の年収が増加傾向にある要因はいくつかある。その中で、影響が大きいのは、もともと高収入を得ていたミドル層も転職するようになってきたことだ。役職定年や希望退職の募集を契機に大企業を退職する人は多い。希望退職の募集では、退職勧奨の対象者以外の応募が相次ぎ、会社の想定よりも多くの従業員が集まることは珍しくなくなった。

求人を出す中堅・中小企業の方も、若手を採用して教育するよりも、経験豊かで地頭の良いミドルを採用した方が、即戦力の確保という意味では効率が良い。「若年層を中心とした人手不足」も中堅・中小企業が50代を採用する要因ではあるが、必ずしも、若年層が採用できないから50代を採用している訳でもない。若年層にない価値をミドル層に見出しているから採用している面もある。これからのミドルは、自社の中だけでなく社外の労働市場で評価される「若年層にない価値」を磨くことに留意すべき時代になってきた。