崩れる「35歳の壁」 中途採用、ミドル層が主役に
何歳まで転職できるのか――。仕事探しで誰もが気になるのが年齢だ。中途採用では年齢を重ねるほどに経験や専門性を求められる。転職のハードルが上がり、尻込みする人も少なくない。長らく転職年齢の上限とされてきたのが「35歳の壁」だ。現実はどうなのか。総務省の労働力調査をみると、2020年の転職者数のうち35歳以上は186万人で全体の約6割を占めた。このうち45~54歳の中高年は59万人と、10年前から55%も伸びた。
(日本経済新聞 1月27日)
企業が年齢と関係なく採用するのであれば、転職者の年齢分布は、就労者の年齢分布に比例するはずだが、実際には、転職者は35歳以下の世代に偏っていた。多くの日本企業は、長期雇用を前提としているため、中途採用後に一定期間就労してくれることを期待しているからだ。
しかし、定年を延長したり廃止したりすることが珍しくなくなり、ミドル層を中途採用しても長期間就労するようになってきた。採用コストはかかるが、若手を育成する時間と費用を節約できると考えれば、ミドルの中途採用は採算が取れる。加えて、ジョブ型雇用が広がってきたことで、年齢よりも経験や能力がより重視されるようになった。
ミドル層やその上のシニア層にとっては、年齢がネガティブな要素とならなくなってきたのは、雇用機会を拡げる意味で喜ばしい。ただ、一方で、ジョブ型雇用では、求められる職務を遂行する能力がないと判断された場合、解雇される可能性もある。年齢と関係なく雇用を得る機会があるとともに雇用を失うリスクもあることには留意が必要だ。