高齢化ドイツ、労働力先細りに危機感

技術革新と製造業の拠点として長く時代の最先端を走ってきたドイツが今、先進国の多くに先んじて「人口動態の崖」に向かっている。欧州最大の経済国ドイツが人口構成の変化で勢いをそがれ、年金制度に圧力が掛かると共に、今後何年にもわたってインフレが上昇する恐れがある。エコノミストの予測では、ドイツの労働人口は早ければ2023年にピークを迎え、30年までに最大500万人減少する可能性がある。新型コロナウイルス感染拡大はそうした傾向に拍車を掛けているが、労働力不足の主因は、差し迫ったベビーブーマーたちの退職だとエコノミストは指摘する。

(THE WALL STREET JOUNAL 12月27日)

日本はいち早く労働人口の減少に直面しているが、他の先進国も労働人口減少時代に突入しつつある。欧州ではドイツが比較的早く労働人口のピークを迎える。EU最大の経済規模を誇るドイツの成長率鈍化は、欧州経済全体にとって影響が大きい。

今まで、シリアなどの中東からの難民や移民がドイツを目指したように、賃金の高いドイツは多くの外国人労働者を引きつけ、それがドイツの労働力不足を緩和してきた。しかし、大量の移民の流入によって、ドイツの世論もさらなる移民の増加には否定的な意見に傾いている。移民の流入が細れば、労働力不足から賃金がさらに上昇し、コストプッシュインフレに陥る可能性は高い。さらに、労働力不足によって経済成長率が鈍化すれば、不況とインフレが同居するスタグフレーションとなる。

外国人に頼らないとすれば、ドイツが取れる対策は、高齢者や女性の労働参加率を向上させるか、1人当たりの労働時間を長くするか、労働生産性を向上させることだ。ドイツでは、既に就労している人の労働時間を長くすることは世論の支持を得られない。したがって、取り得る政策としては、労働参加率と労働生産性の向上ということになる。この事情は、日本も同じだ。ドイツの状況に注視しながら、今後の日本の政策も考えていかなくてはならない。