ユニバーサル農業にガ・ガ・ガーン!
静岡県浜松市で障害者を積極的に雇用して芽ネギなどを生産する京丸園での実話を基に描いた絵本「めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!」が発売された。題名の「ガ・ガ・ガーン」とは、代表の鈴木厚志さん(57)が障害者と出会っての気付きや驚き、感動を表している。 京丸園は、高齢者や障害者など多様な人がそれぞれの役割を発揮できる「ユニバーサル農業」を実践する。従業員94人のうち、22人が障害者だ。
絵本は、特別支援学校の先生が、障害のある生徒を「働かせてほしい」と連れてくる場面から始まる。鈴木さんは障害者に農作業は難しいと考え、ある職人技を見せて断ろうとする。だが先生は、生徒でもできるようにする工夫を提案する。これが最初の「ガ・ガ・ガーン」で、その後も鈴木さんはさまざまな気付きや発見を基に、誰もが働きやすい農園を作り上げていく姿を描いている。
(日本農業新聞 12月16日)
「めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!」は、障害者が農園の作業に参加する話が中心だが、高齢者が農作業をしようとする場合にも当てはまる。「高齢者や障害者など多様な人がそれぞれの役割を発揮できるユニバーサル農業」がそのテーマだ。加齢や障害で体が不自由な人が農作業をする場合、健常者と同じようにはできないが、何もできないわけではない。できない理由を見つけることより、できる工夫を考えることの方が生産的だ。
ただ、できない理由を見つけるのは簡単なのに比べて、できる工夫を思い付くには苦労がいる。そのため、人手が足りているうちは、できない理由を指摘して高齢者や障害者の採用を断ることも多い。
しかし、できる工夫が社会で共有され、みんなが簡単に知ることができたら、この状況は変わる。「めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!」は、絵本という形態で「誰もが働きやすい農園」の事例を示した。公的機関の事例集も役には立つが、このような絵本の物語として取り上げることで、より広範に伝えることができる。多くの人にとって、自分も工夫してみようと思い立つ契機になるだろう。