年金は「何歳」で受け取れば最もお得か
会社員にとって「定年延長」と「年金の繰り下げ」はセットである。公的年金の受給開始が65歳からになるのに合わせ、企業には65歳までの雇用機会の確保が努力義務とされた。2022年年4月には年金法が改正される。それによって何が変わるのか。公的年金(厚生年金)の標準的な受給開始年齢は65歳だが、受け取るタイミングは自分で選ぶことができる。60~64歳で早めに受け取ることを「繰り上げ受給」、66~70歳で遅めに受け取ることを「繰り下げ受給」という。22年4月からは繰り下げ受給の上限が75歳まで延長される。
(東洋経済 12月10日)
「年金は何歳で受け取れば最もお得か」は人によって異なる。繰り下げ受給を選択すると、毎月の年金額は増えるが、受給期間は短くなるので長生きをしなければ受給総額は増えない。70歳まで受給開始を遅らせた場合、損益分岐年齢は81歳超となり、男性の平均寿命の81.64歳に近くなる。自分が平均以上に長生きできると思う男性は、70歳まで繰り下げた方が良いことになるが、長生きできると確信している人はそう多くない。そのため、繰り下げ受給を選択する人は少ないのが現状だ。不確実な未来に備えるよりも、元気なうちにもらえるものはもらっておこうと考えがちなのは致し方ない。
今後、健康に関するビッグデータの分析が進み、健康状態と余命の相関関係が高い精度で予測できるようになれば、健康診断に基づく余命予測に従って、個人ごとに「年金は何歳で受け取れば最もお得か」の答えを導くことも可能になる。将来は、死亡確率の計算に長けた生命保険会社のサービスとして提供されるのかもしれない。
また、加給年金の有無も「年金は何歳で受け取れば最もお得か」が人によって異なる要因のひとつだ。加給年金は、年金受給者に生計を維持されている配偶者または子がいるときに支給される。繰り下げ受給を選択すると、年金を受け取っていない期間の加給年金は受け取れないことになり、その分、生涯の年金受給総額は減少する。政府が繰り下げ受給を推進したいのなら、繰り下げ受給をしても加給年金を受け取れるよう制度を見直すべきだ。