退職金の一部を運用 知恵と工夫で資産長持ち
長い会社員人生が「定年」という節目を迎えるとき、多くの人が手にする退職金。その金額は平均約2000万円前後になる。これだけまとまったお金を手にする機会はそうあるものではない。海外旅行に行こうか、家の改修費に使おうか、これを元手に起業しようか――。夢は膨らむが、退職金は人生後半をより豊かに安心して暮らすための大事な原資でもある。人生と同様、資産の寿命を延ばすことも考えたい。
(日本経済新聞 11月26日)
ジョブ型雇用が一般的になると存続が危ぶまれる退職金ではあるが、現状では、老後の貴重な資金だ。この運用如何で、退職後の生活のゆとりは大きく違ってくることなる。
今までは、低金利が続く日本では、円の預貯金だけでなく、株やリート、外国の金融資産など、高利回りが期待できる資産を持つことが、良く推奨されてきた。実際、コロナ禍にあっても、先進国の株式、特に、米国株は、史上最高値を更新し続けている。円安ドル高に推移した為替レートの影響もあり、為替ヘッジなしで米国株のインデックスを買っていた日本人は、直近の1年で資産を大きく増やした。
ただ、ハイリターンにはハイリスクが付きものであることに留意が必要だ。1年以上、上昇を続けている相場の中にあっては、リスクは小さいのではないか、と期待しがちだが、長期的な視点に立てば、過去に何度も暴落を繰り返している。暴落しても生活に困らないようなリスクヘッジはしておくべきだろう。特に、米国の連邦準備制度理事会(FRB)を始めとする先進国の中央銀行は、金融緩和から金融引き締めへと舵を切り始めた。金融政策の転換期には、市場のボラティリティが大きくなることが懸念される。FRBの動向に注視しながら、時には、キャッシュの比重を増やして相場の変動に備えることも必要な局面だ。