迫る就職氷河期世代の老後困窮、2040年に生活保護費の総額は9兆円規模に
世帯主が労働年齢期にあるときに非正規であると、退職金や年金が不足するため、退職後に生活保護の対象になる可能性が高い。非正規労働者の比率の推移から計算すると、2040年における高齢者向けの生活保護費は、現在の3.8倍となる。これを賄うためには、消費税率を2.5%ポイント以上引き上げる必要がある。
(現代ビジネス 11月14日)
今でも、生活保護受給者の半分程度は高齢者世帯だが、非正規労働者が多い就職氷河期世代が65歳を超えると、その数は急速に増加する可能性が高い。比較的収入の少ない非正規雇用では、十分な貯蓄をすることが難しく、年金も少ない。加えて、退職金を得られないことが多い。その結果、仕事を辞めた後は、貯蓄はなく、少額の年金だけが収入源になることが予想される。生活保護対象者の増加は避けられそうにない。
このことに政府も危機感を持ち、厚生労働省は、就職氷河期世代の非正規雇用労働者30万人を正規雇用に転換させる事業を行っている。これは、未来の政府の生活保護費を企業に肩代わりさせようとする政策ではあるが、財政にインパクトを与えるほどの成果を上げることは難しそうだ。国から一時的な助成金をもらっても、企業は、正社員として雇用する価値を見いだせなければ、採用には踏み切らない。トライアル採用でも助成金を支給する制度にはなっているが、多くの候補者にトライアルだけを繰り返すこともできないので、利用するのに二の足を踏む。
そもそも、企業にとって価値のある人材を育成するには、企業内教育だけに頼っていたのでは限界がある。就職氷河期世代に限らず、非正規雇用でキャリアを積めなかった人々に、実務的な職業訓練を行う社会的な仕組みが必要だ。