理科室にたどり着いたIターン焙煎士

趣味のコーヒー焙煎の腕を磨く過程で生豆(なままめ)を水洗いする「水洗いコーヒー」を知り、中国地方の最高峰・大山(標高1729メートル)の麓で昨年、63歳で起業した元サラリーマンがいる。千葉県出身の遠藤明宏さん(64)だ。Iターン焙煎士が生み出したのは「奥大山の水洗い珈琲」。会社勤めで培った広報、営業スキルを駆使して着実に販路を拡大。「鳥取の新名物にしたい」と夢を膨らませている。
(産経新聞 8月4日)

この記事で紹介されている遠藤氏は、日本ハムで商品企画や営業の仕事を担当していた方だ。コーヒー焙煎の仕事をした経験はないが、広報や流通、品質管理、営業のスキルは活かすことができる。ハムとコーヒーでは、市場が異なるものの、同じ食品業界であることから、今までの経験を活用しやすい。

こうした事業主本人のノウハウに加えて、大山の伏流水、廃校となった小学校の理科室、鳥取県からはベンチャー支援金などの環境が、「奥大山の水洗い珈琲」の実現を後押しした。このケースの場合、これらの要素のどのひとつが欠落しても、起業は難しかっただろう。Iターン起業を広めるには、事業主が起業への熱意を持つだけでなく、地元自治体が、事業を成立させるための要件を満たす環境を提供するよう、努力する必要がある。