「遠隔テック」人手不足補う 商品陳列や建設現場にロボ

スタートアップの遠隔操作技術が現場作業や接客といった業務の効率化を後押ししている。遠隔操作ロボ開発のテレイグジスタンス(東京・中央)はコンビニ大手との提携で商品補充ロボを実用化し、次は陳列型の開発に乗り出す。建設現場では巡視に使う動きが広がる。都市部に比べて労働人口が少ない地方の人手不足の緩和につながる可能性がある。
(日本経済新聞 6月16日)

テレイグジスタンスとは、遠隔地にある物があたかも近くにあるかのように感じながら、操作などをリアルタイムに行う環境を構築する技術のことで、1980年頃に提唱された。操作者の頭の動きどおりに動き、カメラの映像を操作者に提示するシステムが最初に開発されたのは1981年のことだ。それから40年、テレイグジスタンスは、ついに普及期を迎えようとしている。

これまでも遠隔操作の需要はあったが、現場で人間が直接操作するのに比べて、機能は劣り、費用は高いことが普及の壁となっていた。今や、ロボットやAIの進化により、機能は向上し、コストも低減して、費用対効果は採算ベースに乗り始めている。このため、小売店の品出しや建設現場に限らず、応用の場は様々な分野に拡大してきた。日本ではあまり報道されないが、たとえば、軍事技術としても実用化が進んでいる。戦場でAIとテレイグジスタンスを装備したロボット同士が戦闘を繰り広げる光景は、もはやSFの世界ではない。戦場でなくても、自衛隊の災害派遣では、人が入れない過酷な環境下でテレイグジスタンスが威力を発揮する。

テレイグジスタンスの効用としては、遠隔地からの操作が可能である点に注目が集まりやすい。しかし、ロボットを介して操作を行うことにより、人力を必要としない点も重要だ。テレイグジスタンスは高齢者や障害者のように体力に制約がある人の雇用を拡大するのに役立つ。これからは、地方に住む高齢者が、全国の小売店舗や建設現場、農場などのロボットを操作して仕事をこなす光景も普通に見られるようになるのかもしれない。