農業に派遣本格化 特定地域づくり協同組合 複数事業者で雇用
農林漁業者や食品業者らでつくる「特定地域づくり事業協同組合」による農業分野での人材派遣が本格化してきた。事業者が協力して人を雇い、働く場も確保する仕組み。鳥取、長崎両県などで組合の人材が既に農作業に従事する。各組合は人手が少ない地域での労働力確保や雇用創出につなげる考え。行政も取り組みを支援する。
(日本農業新聞 5月20日)
大都市では企業での働き方の多様化に伴い、副業を始める人が増えてきているが、地方の農林水産業でも複数の事業者で仕事をするのは特別なことではなくなってきた。
元々、農林水産業は季節によって、繁忙と閑散の差が大きな産業だ。そのため、昔から通年で仕事ができるよう工夫をしてきた。たとえば、雪国の農村では、冬の農閑期には室内できる仕事をするのが一般的だった。しかし、その収入は限られているので、戦後の高度成長期になると、農閑期には大都市へ出稼ぎに行くようになる。そして今、出稼ぎに行かなくても、地元の別の企業に勤めることができるようになってきた。
その橋渡し役を担っているのが20年6月施行の特定地域づくり事業推進法に基づく「特定地域づくり事業協同組合」だ。農林業、水産業、食品加工業など多様な業種が参加することにより、通年で雇用を確保することが容易になった。このような仕組みを活用すれば、出稼ぎをすることのできない高齢者も地元の複数の事業者で仕事をすることができる。地方の高齢者の雇用拡大にはプラスになる施策だ。