増える運転手の急病事故、高齢化リスク
タクシーなどの職業運転手の体調が運転中に急変し、事故を起こすケースが後を絶たない。今年に入っても東京都渋谷区で、くも膜下出血を起こしたとみられる70代の男性運転手のタクシーが暴走し6人が死傷した。運転手の高齢化が進む中、事業者の責任は増しており、国はハード・ソフト両面で対策を急いでいる。
(産経新聞 1月24日)
職業運転手の運転中の急病は、若い運転手でも起きうることではあるが、やはり、高齢になるとその発生確率は高くなる。急病によって事故が起きればバス会社やタクシー会社などの事業者の責任も問われることになり、運転手の高齢化は事業者にとってもリスクだ。
もっとも、事業者のリスクは保険など金銭的な対応でカバーすることもできる。一方、取り返しがつかないのは、交通事故で失われる命の方だ。運輸業界における高齢者の活躍の場を確保しつつ、運転手の急病による事故の発生を抑えるには、事故の被害者への補償だけでなく、そもそも事故を発生させない技術を普及させる必要がある。
国土交通省は、ドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載した自動車である先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)の研究開発を官民一体で推進するとして、1991年度から「ASV推進計画」を続けているが、今日までに実用化に至った技術は限られている。デモや実証実験を繰り返して成果をアピールしてきた割には、実用化し普及している技術は少ない。小規模なデモを繰り返している間に欧米中の自動運転技術の進化に追い抜かれた感もある。デモで小さな成果をアピールすることより、運転手が急病になっても事故を起こさない車の実用化に予算と人材と時間を投入すべきだ。