企業の3割が70歳以上雇用 人手不足影響、厚労省
厚生労働省が8日発表した2020年の高齢者の雇用状況調査によると、定年の廃止や継続雇用などにより70歳以上が働くことができる制度のある企業は31.5%で、前年から2.6ポイント増えた。人手不足が深刻化したことが影響したとみられる。働く意欲がある高齢者も増えている。
(共同通信 1月8日)
厚生労働省が雇用状況調査を行ったのは2020年6月。新型コロナウイルス感染症の対策として最初の緊急事態宣言が出されていた頃だ。その時点で、既に、3割の企業が70歳以上を雇用するための制度を整備してきた。70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする「改正高年齢者雇用安定法」が2021年4月から施行されることを見据えて、企業が制度を整えたことに加え、人手不足が深刻な業界では、企業が70歳以上の雇用に以前から積極的に取り組んできたことがこの数字に現れている。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が繰り返され、雇用情勢の悪化が続く中、足元では、高齢者の就業機会はむしろ縮小傾向にある。4月に向けて70歳以上が働くことのできる制度を取り入れる企業は増えると思われるが、制度はできても、実際に就業機会が拡大するとは限らない。「改正高年齢者雇用安定法」が実効性を持つには、景気の変動に関わらず、企業の利益と高年齢就業者の雇用とのバランスを取れるような制度設計が必要だ。景気後退期にこそ、その真価が問われる。