高齢者の働き方、変わる節目に 70歳まで就労機会の措置
2021年は高齢者の働き方が変わる節目の年となる。高年齢者雇用安定法の改正で、4月から企業は従業員が70歳まで働けるような措置をとる努力義務を負う。背景には少子化による労働力不足や社会保障財政の逼迫がある。長寿化が進むなか、人生の後半戦をどう生きるか、一人ひとりの価値観が問われる。
「65歳以降も働きたいですか」――。太陽生命保険は毎年実施する社員向けの現況調査で、20年に初めてこんな問いを設けた。17年4月に定年を60歳から65歳に延長し、さらに希望すれば70歳まで嘱託社員として継続雇用する制度を導入した。定年延長で働く60代社員などからの回答は約5割が「働きたい」だった。
(日本経済新聞 1月1日)
高齢になっても働きたいと思う人が多いのは、日本社会の特徴のひとつだ。欧州やロシアでは、働かなくても生活できる程度の年金を支給すべきだという意見の方が多い。このため、政府が年金の支給開始年齢を引き上げようとすると大規模な反対デモが起きたりする。一方、日本では、経済的な必要性だけでなく、勤労を続けること自体に意義を感じる人もいる。国によって、価値観や人生観は多様だ。
ただ、日本でも、70歳まで働くとなると、個人によって意見は異なってくる。太陽生命保険の調査では、約5割が「働きたい」と答えているが、約5割しかいなかったとも言える。同じ国でも、老後をどう生きたいかは、高齢になるほど、人によって希望が分かれるものだ。
社会制度としては、高齢者の多様な価値観や人生観と幅広い企業側のニーズに対応できるよう労使双方の選択の自由を拡げることが重要となる。年齢によって一律に扱う制度から高齢者が生み出す付加価値に基づいて処遇する制度へ、そして、多様な働き方を許容する社会へ転換することが必要だ。