再雇用の基本給、6割下回るのは「不合理」 名古屋地裁
定年後再雇用者の基本給減額の是非が争われた訴訟の判決で、名古屋地裁は28日、同じ仕事なのに基本給が定年前の6割を下回るのは不合理な待遇格差に当たると認め、名古屋自動車学校(名古屋市)に未払い賃金分の支払いを命じた。高齢者雇用が推進される中、他企業の賃金制度に影響を与える可能性がある。再雇用者の基本給について、企業に正社員との格差是正を求める判決は全国初とみられる。
(日本経済新聞 10月28日)
別の判決では基本給を定年前の6割にしても不合理ではないとされている。今回、6割を下回るのは不合理だとする判決が出たことで、基本給減額の相場は6割減ということになりそうだ。企業によっては、6割以上の減額をしているところもあり、これらの企業は、今後、格差是正を迫られる可能性がある。
格差是正の方法は2通りある。そのひとつは、再雇用者の基本給を増額することだ。新型コロナウイルスの感染拡大前までは、人手不足から60歳以上の従業員の待遇改善が進んでいた。足元では、全体的な求人倍率の低下に伴い、高齢者の待遇改善が足踏みしている業界もあるが、ポスト・コロナの時代には再び高齢者の給与は上昇に向かうだろう。
もうひとつの方法は、定年直前の世代の基本給を下げることだ。もともと基本給の高い大企業では、50代の基本給が他の世代に比べて相対的に下がる傾向が続く。コロナ禍によって、この傾向はさらに加速する可能性もある。
今回の判決は、こうしたトレンドのひとつの収束点を示唆することになった。