住宅ローン、定年後に遠のく完済への道
定年退職後も住宅ローンを返済し続ける高齢者が増えそうだ。日本経済新聞が住宅金融支援機構のデータを調べたところ、2020年度の利用者が完済を計画する年齢は平均73歳と、この20年で5歳上がった。借入時の年齢や金額が上昇しているためだ。70歳まで雇用が継続されても年金生活は不安定になりかねない。貸し手も借り手も老後リスクを吟味する必要がある。
(日本経済新聞 10月5日)
住宅ローンを完済する年齢を高く設定している人は、多くの場合、不動産価格の短期的な上昇を期待しているか、退職金による繰り上げ返済を予定している。不動産価格が上昇するなら、低金利の今、ローンを組んで住宅を購入した方が得だ。ローンの返済に困れば、買った価格より高い価格で不動産を売ればよい。それができない場合は、退職金で繰り上げ返済を行い、完済年齢を下げることもできる。
ただ、こうした楽観的なシナリオは、今や怪しくなってきた。新型コロナウイルスの感染が長引いていることで、不動産価格には下押し圧力がかかっている。今、売却するとローンを完済できず、借金だけが残ることになりかねない。加えて、失業やボーナスカットなどが相次ぎ、収入が減少して毎月のローン返済にも困る人が出ている。退職金の金額も以前ほど多くない。
こうした中、生計を破綻させないためには、自宅といえども、不動産業を営んでいるという意識を持ち、不動産としての投資対効果を客観的に評価して投資することだ。少なくとも、賃貸にしてもローンが返済できないような投資計画には無理がある。加えて、シニアになっても働き続ける準備をしておくことも、老後の生活の安定のためには、合わせて重要だ。