60代の労災が急増 スーパーなど安全対策に遅れ
働く高齢者の増加に伴い、小売業やサービス業で60歳以上の労働災害が急増している。60歳以上の就労が広がる一方で、建設業や製造業に比べると安全管理体制の法的な縛りが緩いことが背景にある。3月末に改正高年齢者雇用安定法が成立し、70歳までの就労が現実になる今後、他産業並みの安全確保が求められている。
(中略)
中央労働災害防止協会(東京・港)によれば、小売業の60歳以上の労災(休業4日以上)は18年が4612件。13~18年に年平均8.8%のハイペースで増えた。同じく労働力の高齢化が進んだ建設業の60代が、年平均1%減らし続けたのと際だった違いをみせる。
(日本経済新聞 5月2日)
労災の発生確率は、建設業や製造業が高い。高所での作業や機械の操作には、危険が付きものだ。
しかし、高齢者にとっては、それ以外の業界でも労働災害にあうリスクが小さいとは限らない。小売業などのサービス業における高齢者の労災の増加は、社会全体で留意すべき変化だ。
厚生労働省が3月に出した「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」では、事業者の留意点として「小売業、飲食店、社会福祉施設等のサービス業等の事業場で、リスクアセスメントが定着していない場合には、同一業種の他の事業場の好事例等を 参考に、職場環境改善に関する労働者の意見を聴く仕組みを作り、負担の大きい作業、危険な場所、作業フローの不備等の職場の課題を洗い出し、改善につなげる方法があること。」を挙げ、サービス業における高齢者の労災に注意を促している。
特に、労災原因の中で、50歳未満に比べて50歳以上の割合が最も大きくなるのは転倒だ。転倒は、どの業種でも起きうる。今までも、ニトリでは転倒しにくい台車を導入したり、平和堂では踏み台を店舗に配置したりと、各企業で工夫をしてきたが、今後は、こうした個別の取り組みを企業や業界を越え、社会全体で共有していく仕組みが重要になるだろう。