働くシニアに給付、25年度から減額 雇用進み役割低下

現役時代に比べて大きく賃金が下がった60~64歳の働くシニアに対し、国が支給する「高年齢雇用継続給付」が2025年度から減額される。高齢者雇用が進み、給付金を上乗せして就業機会を確保する必要性が薄れたからだ。70歳まで働ける環境整備が進むなかで、国は廃止も含めて制度のあり方を検討していく。
(日本経済新聞 3月22日)

60歳以後、賃金が75%未満に下がると、60歳以後の賃金の15%を上限として国が支給するのが「高年齢雇用継続給付」だ。2025年度からは、この支給率の上限が10%に削減される。もともと60~64歳までの人々の就労を促進する目的で導入された制度であることを考えれば、65歳までの継続雇用が義務化されることに伴い、その役割を終えるのは自然ではある。

ただ、すべての企業で65歳までの継続雇用が実現しても、60歳以後の賃金がそれまでの賃金の75%未満になる企業は多い。そのような企業の場合、企業側が高年齢雇用継続給付の減額分を負担して賃金を上げない限り、働くシニアにとっては収入減となる。収入減は、就労意欲の減退につながり、働く高齢者を減少させる方向に力を及ぼす。高年齢雇用継続給付制度を廃止ではなく、減額にして制度を残した理由のひとつはここにある。2025年度以降、企業は賃金水準と就労意欲との間の新たなバランスを模索する必要ことになるだろう。