改正高年齢者雇用安定法が成立
従業員の70歳までの就業確保に努めることを企業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法などが31日の参院本会議で賛成多数で可決・成立した。企業は定年の廃止や延長、継続雇用制度を設けるか、従業員の起業や社会貢献活動を支援することが求められる。来年4月に施行される。
(時事通信 3月31日)
先の閣議決定のとおり、高年齢者雇用安定法の改正案が国会で成立した。これで、改正の中身の議論から、改正案に各企業や組織がどのように対応するかに焦点が移る。多くの企業では、既に、新たな人事制度の検討が始まっており、一部の企業では、対策を実施し始めた。
早期に実施に移された施策のひとつは、業績が良いうちに退職金の割り増しをして希望退職を募り、将来のの負担を軽減しようとする黒字リストラだ。これは、従業員の年齢構成を若返らせ、AI人材など必要な若手を獲得する原資を捻出するという点では企業にとって合理的な施策ではあるが、転職可能な有能な人材から先に希望退職に応募して辞めていくというデメリットも合わせ持つ。
60歳以上の従業員の処遇を成果によって差を付けるというのも、多くの企業が取り入れ始めた施策だ。これは、欲しい人材をつなぎ止めるという点では希望退職よりは優れている。ただ、成果は小さく給与も低いがそれでも退職を希望しない高齢従業員の処遇は課題として残る。企業としては、それらの高齢者に退職を希望してもらうことではなく、高齢者が生み出す成果を向上させることに努力を傾注すべきだ。自社内だけで成果向上が難しければ、改正高年齢者雇用安定法が認める起業やフリーランスの立場で社内とともに社外でも活躍してもらうのも一策だろう。