高齢者労災、深刻化恐れ 70歳就業
65~70歳の就労環境整備を旗印に、政府が今国会で成立を目指す高年齢者雇用安定法(高年法)改正案は、企業の努力義務を、雇用関係を断ち切った上で業務委託契約を結ぶことも認めているのが特徴だ。年金受給開始年齢のさらなる引き上げも取りざたされる中、厳しい環境で働く高齢者のけがや死亡事故などが増える恐れがある。
(中略)
個人事業主やフリーランスの場合、雇用された労働者ではないため、労災認定などを通じた救済が難航する懸念は根強い。統計上、労災に分類されず、実態が分からないまま高齢者が仕事で死傷するケースが増えることも想定される。
(東京新聞 3月15日)
企業の努力義務の中に業務委託契約という形態を含めることになったのは、企業の負担を考慮したためだ。70歳まで定年延長することを義務にしたのでは、企業の負担は大きく、抵抗も大きい。一方、企業の負担を軽減すれば、その分、働く側の高齢者の方にしわ寄せがくるのは致し方ないとも言える。
ただ、安全に係わることとなると、仕方がないでは済まされない。個人事業主やフリーランスが安全に働ける法的な環境を整備する必要がある。少なくとも業務委託契約の中で発注者の安全確保責任を明記するよう義務付けるべきだ。高齢者に限らず、多様な年代の個人事業主やフリーランスが増えている現状を鑑みれば、「雇用された労働者」ではない人々全体の安全を確保するための施策が求められている。既存の労働法の概念を越えた発想と法体系が必要だ。