大分大山町農協、農協を地域社会の核に

「リーダーなら夢を語れ」。大分大山町農協(大分県日田市)の矢羽田正豪組合長(72)はこう語る。農産物の生産、加工、販売を手がける「6次産業化」に早くから着手し、直売所「木の花ガルテン」を年間240万人が詰めかける繁盛店に育てた。2019年12月からは高齢者を雇用し、コミュニティー作りの核に育てる「文産農場」事業も始めた。視線の先には高齢化が進む地域の新たな理想像がある。
文産農場では雇用した高齢者にクレソンやハーブを栽培してもらい、木の花ガルテンで販売する計画だ。「月に10万~15万円の収入がお年寄りに入るようにしたい」。さらに「若い頃の思い出や孫の話でみんなでワイワイ盛り上がる。高齢化の町にはそういう場所がないとさみしい」と、ハウスの隣には冷暖房完備の作業場兼休憩談話室も造る。
(日本経済新聞九州・沖縄版 1月20日)

大分県の大山町農協は、農業の6次産業化に早くから取り組んできたことで知られている。この農協は、農産物を生産するという第1次産業から、食品の加工、製造という第2次産業、流通、販売という第3次産業までを総合的に手がけて、地域が産み出す付加価値を高めることに成功した。今では、地元の直売所に遠方から購入しに来る人も増え、近隣の飲食店や土産物店の売り上げ拡大にもつながって、地域経済全体の活性化に貢献している。

その結果、地域の高齢者の雇用も着実に増加してきた。もともと高齢化の進んだ地域であったために、事業を拡大するには、高齢者の雇用を増やす必要があったという側面もあるが、高齢者が他の人とのコミュニケーションを楽しみならが、気軽に働ける環境を用意したことで、高齢者の勤労意欲をかき立てることに成功したことも、その理由のひとつだ。そして今、農協が産み出した雇用の場が、地域コミュニティーの核になろうとしている。これは、農業の6次産業化がコミュニティー・サービスの提供という新たなサービス産業をカバーしていく、よい契機となるだろう。