「黒字リストラ」拡大、早期退職で人員見直し
好業績下で人員削減策を打ち出す企業が増えている。2019年に早期・希望退職を実施した上場企業35社のうち、最終損益が黒字だった企業が約6割を占めた。これらの企業の削減人員数は中高年を中心に計9千人超と18年の約3倍に増えた。企業は若手社員への給与の再配分やデジタル時代に即した人材確保を迫られている。業績が堅調で雇用環境もいいうちに人員構成を見直す動きで、人材の流動化が進む。
(日本経済新聞 1月13日)
早期退職を募集するにも退職金の増額など費用はかかる。利益が出ている黒字のうちに、その利益を使って人員構成をスリムにしておくのは、経済合理性に適った施策だ。人手不足の時代とはいえ、すべての職種や年齢層で人手が不足しているわけではない。余剰の人員を整理して、不足の人材の確保に人件費を振り向けるのは、自然な流れだ。今後も、黒字リストラは拡大し、普通のことになってニュースにもならなくなるだろう。
終身雇用とは縁の無い欧米の企業では、中高年だけでなく、若年層も含めた全従業員がリストラの対象だ。年齢とは無関係に、人事評価の下位15%を毎年解雇する企業は珍しくない。終身雇用をなくすというのは、中途採用される機会も増えるが解雇されるリスクも増えるという厳しい競争社会になることでもある。それは、働く人々の生涯賃金が、新卒で入社した企業の規模や業績で決まるのではなく、労働市場における自分の価値の生涯にわたる総和で決まる社会になるということだ。そこで働く者が経済的安定と自己実現を維持するには、社会環境の変化に適用し続ける努力が必要となる。