70歳就業、企業に努力義務、中途比率の公表も義務化 厚労省
厚生労働省は8日、高年齢者雇用安定法などの改正案の要綱を労働政策審議会の部会に提示した。2021年4月から企業に対し、70歳までの就業確保に努めることを求めるほか、従業員301人以上の大企業には、採用者に占める中途比率の公表を義務付ける。同省は20日に召集予定の通常国会に改正法案を提出する方針。
(時事通信 1月8日)
いよいよ、企業に70歳までの就業確保の努力義務を課す高年齢者雇用安定法の改正法案が国会に提出される。通称、「70歳定年法」とも呼ばれているが、定年を70歳に延長する義務があるわけではない。起業支援や社会貢献活動への資金提供なども企業の努力の選択肢として用意している。
一方、同じ改正案に踏まれている「採用者に占める中途比率の公表」は義務だ。大企業にとっては、こちらの影響の方が大きいかもしれない。この法改正の狙いは、中途採用を増加させ、年功序列と終身雇用から流動性の高い人事制度への変革を促すことにある。ただ、従業員数や人件費が一定であれば、中途採用の増加は、新卒採用の減少と中途退職者の増加を意味している。企業としては、給与が低く将来性のある新卒の採用を削減するより、給与の高い高齢の従業員のリストラに積極的になるだろう。実際、黒字でもリストラを強化して、若い人材の確保の原資にする大企業は多い。
結局、企業は、希望者には70歳までの就労機会を提供する制度を整える一方で、45歳以上の従業員に対して希望退職を募るという行動をとることになりそうだ。どちらの影響が大きくなるか、はっきりするには時間が必要かもしれない。しかし、従業員にとって、自分の市場価値を高める努力を積むことが重要な時代になってきたことは確かだ。