年金繰り下げの基本 増額へイデコと「継投」も

年金をもらい始める時期を遅らせる代わりに額が増える「繰り下げ受給」。選べる年齢を国は75歳まで延ばす見通しで、その場合の年金額は原則である65歳開始に比べて84%増える。繰り下げは、終身給付という年金本来の利点をより生かせる面がある一方、注意点も多い。
(日本経済新聞 12月22日)

年金を受給できる年齢になると、繰り下げ受給を選択するべきか否かを迷うことも多い。受給を繰り下げて月々の年金額が増えるのは魅力だが、長生きできなければ生涯に受け取る年金額はむしろ少なくなる。長生きするリスクと長生きできないリスクを天秤にかけて考えてみることになるが、結局、多くの人は、長生きするリスクに目をつぶって受給開始を繰り下げず、すぐに年金を受け取ることを選択している。これは経済的な損得の問題であるだけでなく、老後を如何に生きるかという人生観の問題でもあり、どちらが良いかは一概に決められない。人によって正解は異なる。

ただ、長生きするリスクは着実に増大していることも事実だ。75歳まで受給開始を繰り下げた人が75歳までに受け取らなかった年金を75歳以降の増額分で取り戻すには、90歳ぐらいまで長生きする必要がある。65歳のときには90歳まで生きないかもしれないと思っていても、75歳の時点で健康であれば、90歳まで長生きする確率は小さくない。そう考えると、自分の健康状態と相談しながら、就労とイデコなどの自己資金の運用によって当面の生活を支え、年金の受給開始時期を遅らせていくのも理に適っている。