進め、農福連携 浜松市のユニバーサル農業研究会
障害者、高齢者でも従事できる「ユニバーサル農業」。その一環で、担い手不足に悩む農業と、雇用を求める障害者のマッチングを目指す「農福連携」が浜松市で進んでいる。今年農林水産大臣が視察に訪れ、全国規模の賞を受賞するなど注目を集めている。
12月中旬、浜松市南区の農業用ハウス内で、ミニチンゲンサイの収穫が行われていた。黙々と作業していたのは農業生産法人「京丸園」の従業員たち。役員を含め総勢100人のうち39人が知的・身体的な障害を持っている。
苗を植える際に使うトレーには円錐(えんすい)形の穴が開いていて、「苗を穴に落とすだけで、誰でも百点満点の植え付けが出来る」と、社長の鈴木厚志さん(55)。25年ほど前から障害者を雇用するようになり、作業の工夫を重ねてきた。健常者にとっても使いやすくなり、会社全体の作業効率も上がったという。
(朝日新聞 12月15日)
農福連携とは、農業と福祉の連携によって、障害者等が農業で活躍できる場を創造し、労働力確保という農業が抱える課題と障害者等の就労先の確保という福祉の課題の双方を達成しようとする取り組みだ。農林水産省は平成27年から農福連携に取り組む法人や地域協議会に対する補助事業を行っている。そのひとつである福祉農園等整備事業には、高齢者の生きがい農園も含まれており、障害者だけでなく高齢者の雇用拡大も目的のひとつだ。
実際、障害者が働きやすくなるような作業プロセスの改善は、高齢の健常者にとっても働きやすい環境を整えることにつながる。たとえば、この記事で紹介されている「京丸園」の苗植え用トレーは、高齢者にとっても便利な工夫だ。
農水省もそれぞれの法人に交付金を配布するだけでなく、こうした工夫を社会全体で共有することにも努力すべきだろう。農水省は、現在、農村工学研究所が作成した「農業分野における障害者就労の手引き」を使って広報活動を行っているが、今後は、高齢者就労も含めた「ユニバーサル農業のノウハウ」の普及にも取り組むことを期待する。