春季交渉、働き方問う シニア雇用や残業削減焦点に
2019年の春季労使交渉が大詰めを迎える。人手不足が深刻の度合いを増す現状で、賃金水準と並んで問われるのが生産性を高めるため「働き方」をどう再定義するかだ。足元の労使交渉では、シニア雇用や残業時間の削減を主軸に交渉が進む。グローバル化やデジタル時代に即した人材をどう育て、どう報いるか。抜本的な働き方の見直しが待ったなしだ。
(日本経済新聞 3月5日)
春季労使交渉におけるシニア雇用を巡る争点は、主に60歳定年制と定年後の処遇に関する点だ。大企業では、定年延長に踏み切る企業はまだ少ないものの、その数は増加しつつある。定年を延長しないまでも、定年後の再雇用者の処遇を改善して定年前との差を縮小し、再雇用者の勤労意欲を高めようとする動きも広まってきた。いずれも、企業がシニア人材をお荷物ではなく、戦力として認識するようになっていることの証左だ。日本では、労働組合も定年延長や再雇用者の処遇改善に賛成することが多いため、交渉は進展する可能性が高い。
残された問題があるとすれば、管理職の処遇だ。多くの企業では、管理職は定年前に役職を離任し、労働組合員に戻っているが、労働組合がその利益を守ることに熱心であるとは限らない。管理職から見ると、管理職時代と定年後の再雇用のときとでは、処遇に大きな差があり、モチベーションを維持しづらいケースも珍しくない。従来の労使交渉の枠組みを超えて、管理職の60歳後の戦力化と処遇について検討していく必要がある。