介護保険65歳以上は適正か 「高齢者の再定義」議論
厚生労働省は9日、介護保険のサービスを受けられる年齢のあり方について議論を始めた。高齢期に入っても元気に働き続ける人が増えており、65歳以上とする今の線引きが時代に即していないとの声があるためだ。反対・慎重論も多く、実際に開始年齢を引き上げる制度改正はすぐには実現しそうにないが、高齢者を再定義する議論が年金や労働分野に加え、介護にも広がってきた形だ。
(日本経済新聞 10月9日)
年金制度の改正では受給開始年齢を70歳まで繰り下げられるようにすることが検討されている。それを考えれば、介護保険の介護サービスの対象を65歳よりも引き上げるのも、一見、自然に思えないこともない。
しかし、「希望すれば、年金の受給を遅らせることができる」ということと、「介護が必要な状態になったとしても介護サービスが受けられない」ということは同じではない。前者では高齢者の選択の自由が拡大されるが、後者では逆に選択の自由が制限され、改正の方向性としては正反対となる。
そもそも介護サービスを受けるには要介護認定が必要だ。高齢期に入っても元気に働き続ける人は、要介護認定を受けることはできず、介護サービスの対象ではない。「高齢期に入っても元気に働き続ける人が増えて」いるのなら、「65歳以上とする今の線引き」を変えなくても65歳以上の介護サービスの対象者は減少するはずだ。まずは、健康寿命を延ばすことによって、介護サービスの対象者を抑制することが重要だろう。