働く高齢者、月収62万円まで年金減額せず 厚労省検討

厚生労働省は働く高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度を見直す。今は65歳以上で47万円を超える月収がある人は年金が減るが、月収を62万円に引き上げて対象者を減らす案を軸に議論する。60歳を超えても働く高齢者が増える中、年金が減る仕組みは就業意欲をそぐとの批判がある。見直しにより、働く高齢者を後押しする。
厚労省が9日に開く社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で、年金減額の対象縮小や廃止の案を示す。縮小案を軸に年末までに結論を出し、2020年の通常国会での法案提出を目指す。
(日本経済新聞 10月6日)

働いて収入を得ても、一方で年金が減額されるのでは、働く意欲が沸かないのは人として自然な感情だ。特に在職老齢年金制度で減額された年金は戻ってくることはないので、対象者は受給する権利のあるお金を失ったという気持ちを強く抱くことになる。一方で、年金の減額で抑制されている給付の総額は1.1兆円に上る。在職老齢年金制度の全面撤廃には、財源問題を解決しなければならない。結局、財源の手当ができる範囲で、在職老齢年金制度の対象者を減らすことになりそうだ。年金財政の面からは対象者を半減させるのが限界であり、半減させる境界が月収62万円以下ということなのだろう。

年金財政を預かる厚生労働省が省内の財源問題というミクロな視点からこのような判断に傾くのは致し方ない。しかし、高齢者の就業意欲が減退することで労働力不足が深刻化してネガティブな影響を受けるのは、国民経済全体の成長だ。労働生産人口が減少する中で経済成長を維持するには、一人当たりの生産性を高める必要がある。マクロな視点に立てば、高齢者の中でも、より生産性が高い、高収入の層の就業意欲を高めることも重要だ。