定年も賃下げもない ネットで仕事選ぶ84歳

英訳が専門の翻訳家、島村泰治は84歳。人生100年時代と考えるなら、まだまだ十分な時間があると思っている。日本語の文字の美しさや文章、文化のすばらしさを多くの人に知ってもらうために、自らがもう一度「トリガー」になりたい。選んだのが、ネットを使って単発で仕事を請け負う「ギグエコノミーの担い手」だ。
(日本経済新聞 9月14日)

医師や弁護士に定年がないように、専門的な能力や資格を持った人は、いくつになっても仕事をすることができる。翻訳家もそうした職業のひとつだ。医師のように対面で診察する必要がない分、仕事の機会は大きいとも言える。まさに、ネットで仕事を請け負うギグエコノミー向きの職業だ。

ギグエコノミーの世界では、年齢は関係ない。年齢だけでなく、性別も国籍も大した意味を持たない。競争力の源泉は、提供する価値と取引相手を拡大するマーケティング力だ。今までに蓄積した人脈やノウハウがマーケティングに活かせるなら、むしろ高齢者が有利とも言える。確かに、ギグエコノミーは参入障壁が低いだけに、競争は激しい。しかし、それは、ギグエコノミーが、高齢者も含めて多くの人々に仕事に参加する機会を提供し、年齢がハンディキャップにならない自由な競争の場を生み出していることの裏返しでもある。高齢者こそ、ギグエコノミーにチャレンジするべきだ。