年金だけで暮らすことは可能か? 米国人の多くが老後を不安視

米国の高年齢の労働者の大多数にとって、退職後について考えることは、ゾッとするような問いかけをすることでもある──社会保障制度だけに頼って暮らしていくことはできるのだろうか?
私たちの誰もが、働き始めたら貯金をしなくてはならないと言われてきた。だが、多くの米国人には単純に、老後に備えた貯蓄ができるだけの稼ぎがなかった。退職後に向けての貯蓄が実質的にゼロだという高年齢の労働者は、およそ3人に1人だとされている。
何千万もの米国人にとって、社会保障給付は最後の望みだが、年金がもらえればそれで十分なのだろうか。
(中略)
結論はこういうことだ──「ただ生き続けることだけが目標ならば、社会保障だけに頼って生きることは可能だ」。社会保障に生活の大半、または全てを依存している人は、退職後にはより苦しい生活に直面することになる。これは、米国の高年齢の労働者の40%が直面している現実だ。
(Forbes JAPAN 8月29日)

日本では、高齢者が年金以外の収入や資産に頼らなければ生活できないとしたら、それは社会保障制度の不備だとする意見がある。しかし、年金だけで豊かな老後が保障される社会は、世界を見渡してもそう多くはない。それが実現しているのは、高福祉、高負担の北欧諸国などの限られた国々であり、多くの先進国では年金だけでは十分でないのが現状だ。

米国も例外ではない。日本に比べると年齢とは無関係に仕事を得ることのできる米国ではあるが、年金だけに依存する高齢者も少なからず存在する。そして、そうした人々の生活は可能ではあるが楽ではない。

日本政府が推進しようとしている高齢者の雇用拡大は、この問題に対するひとつの解ではあるが、定年のない米国社会でも高齢者が十分な収入を確保できず、その貧困が問題となっていることには留意が必要だ。この事実は、日本から定年がなくなっても、問題がすべて解決するわけではないことを示唆している。