労災に増える高齢者 目立つ「転倒」4割近くが60歳超
働く高齢者の労働災害(労災)が増えている。2018年に労災に遭った60歳以上の働き手は前年よりも10.7%増え、労災全体の4分の1を占めた。政府は70歳までの雇用の確保を努力義務として企業に課す方針を打ち出したが、高齢者が安心して働ける職場づくりが課題として浮かび上がる。
厚生労働省が17日発表した18年の労災発生件数は前年比5.7%増の12万7329人だった。このうち60歳以上は3万3246人と、全体の26.1%に達した。10年前の08年は18.0%だった。
(朝日新聞 5月18日)
このところ、毎年、労災の統計が発表になるたびに、高齢者の労災の増加が話題になる。年々、高齢者の就労が拡大しているので、労災に占める高齢者の割合が増大するのは当然ではあるが、高齢者の方が労災発生確率は高いのも事実だ。そのため、建設業など、もともと危険と思われている作業が多い業界では、転落事故の防止など労災リスク低減のための取り組みが始まっている。
しかし、高齢者の労災リスクは一般に危険と思われている作業場ではないところにも潜んでいる。たとえば、今回指摘されている「転倒」は、スーパーの売り場や倉庫でも起きる。荷物を持って歩いている高齢のパート従業員が、わずかな段差に躓いて転倒することは珍しくない。高齢者が安心、安全に仕事をできる環境にするには、高齢者の視点に立って、職場に潜在するリスクを評価する必要がある。