70歳雇用、企業に努力義務 政府、起業支援など7項目
政府は15日、希望する高齢者が70歳まで働けるようにするための高年齢者雇用安定法(総合2面きょうのことば)改正案の骨格を発表した。企業の選択肢として7項目を挙げた。70歳まで定年を延長するだけでなく、他企業への再就職の実現や起業支援も促す。企業は努力義務として取り組まなければならなくなる。
(中略)
企業が取り組む選択肢の7項目のうち、同じ企業内で雇用を継続するのは3つだ。(1)定年延長(2)定年廃止(3)契約社員や嘱託などによる再雇用――だ。
社外でも就労機会を得られるように支援する。(4)他企業への再就職支援(5)フリーランスで働くための資金提供(6)起業支援(7)NPO活動などへの資金提供――だ。
(日本経済新聞 5月16日)
70歳雇用の義務化に企業が反対する中、70歳までの雇用を拡大したい政府は、企業の努力義務の選択肢を増やすことで企業の理解を得ようとしている。同じ企業内で雇用を継続する定年延長、定年廃止、再雇用だけが選択肢では、規模の小さな企業にとって負担が大きい。社外での就労機会拡大への支援が選択肢に加えられたことで、企業は、希望するすべての従業員を70歳まで雇用する義務から逃れることができる。実際、企業内で雇用を継続するだけでなく、企業の枠を越えた労働市場全体の流動性を高めて、高齢者と仕事のマッチングをより大きな市場の中で進める方が、社会全体の付加価値向上には寄与する。
ただ、一方で、「他企業への就職支援」は、他企業を紹介しただけで終わり、転職には結び付かないかもしれない。「フリーランスで働くための資金支援」も実質的には退職金や年金の上乗せと同じになり、フリーランスでの自立には効果がないかもしれない。これらの社外就労機会拡大への支援が高齢者の雇用拡大に意味を持つようにするには、支援中身の具体化が重要だ。