労働市場の改革「不可欠」=高齢者や女性活用を-OECD提言
経済協力開発機構(OECD)は15日、対日経済審査報告書を公表した。高齢化で労働力不足が深刻化する中、持続的な経済成長には「労働市場の改革が不可欠」だとし、高齢者や女性の活用を推進するよう提言した。
OECDは日本の労働人口が2050年までに24%(1610万人)減少すると試算し、高齢者や女性の雇用促進が労働力不足を緩和する上でカギになると強調した。
報告書では、終身雇用や年功序列型の報酬制度、定年退職といった日本企業の慣行が「人生100年時代」にそぐわず、高齢者らの雇用を阻害していると指摘。能力に基づく賃金体系に移行するとともに定年制を撤廃し、正規雇用で働き続ける高齢者らを増やすことが生産性向上につながると訴えた。
(時事通信 4月15日)
OECDは以前から日本に対して高齢者や女性の活用を促してきた。終身雇用や年功序列型の報酬制度、定年退職などの日本型労働慣行の見直しも従来から求めていることではある。OECDに指摘されるまでもなく、日本の政府も企業も同様の見解を持っており、労働慣行は少しずつではあるが能力に基づく賃金体系へ移行し、定年制を廃止する企業も出てくるようになってきた。
しかし、変化はそれほど早くない。そもそも「人生100年時代」を標榜する政府自身が公務員の人事制度を大きく変えることができないでいる。公務員の定年を65歳に引き上げる方向で検討されているが、抵抗も大きく、その先の定年廃止は目処が立っていない。能力に基づく賃金体系へ移行するということは、能力によって賃金に差がつく制度になるということであり、給与が下がる人々の勤労へのモチベーションを如何に維持するかという問題に突き当たる。この問題を直視して、これを日本社会全体で克服しないと、変化を加速させることは難しい。