厚生年金加入、70歳以上も 厚労省が納付義務を検討 受給額を上乗せ

厚生労働省は会社員らが入る厚生年金について、一定額以上の収入などがある場合、70歳以上も加入して保険料の支払いを義務付ける検討に入る。現在は70歳未満としている保険料の納付期間が長くなるため、受給できる年金額は増える。健康寿命は延び続けており、将来に備えて長い期間働く高齢者が増える可能性がある。
(日本経済新聞 4月16日)

厚生労働省は、年金を受け取る年齢を70歳超にできるようにする方向で検討を進めてきたが、それに加えて、70歳以上にも厚生年金の加入を義務付ける方針が明らかになった。実現すれば、年金財政の改善には効果があるが、抵抗も小さくないだろう。

少なくとも、企業にとっては、保険料負担が増加するのはマイナスだ。高齢者を雇用する動機を減退させる可能性もある。人手不足の中、60歳以上のシニア層への求人が増えているとはいえ、70歳以上の層については需要が極めて強いという状況ではない。企業としては、70歳以上の従業員に対して、費用対効果を今までよりも厳しく評価することになり、それは求人に反映されることになる。

仕事を求める高齢者にとっても、良いことばかりではない。70歳以上になっても働く動機は、健康のためという人もいる一方で、生活のためという人も少なくない。年金だけでは生活費が足りないと感じて働いている人々にとっては、将来の年金受給額よりも、今日の手取り額の方が大事かもしれない。

70歳以上のシニア層への厚生年金の加入義務化は、この層の労働市場における需給バランスに留意して検討を進める必要がある。