鉄鋼4社が65歳に定年延長 労働人口減に対応

日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所、日鉄日新製鋼の鉄鋼4社は4日、定年を60歳から65歳に延長することで労使間で合意したと発表した。令和3(2021)年度以降に60歳になる社員が対象。労働人口の減少や年金支給開始年齢の引き上げに対応する。若手社員への技能伝承により、技術力を維持する狙いもある。
定年延長に業界が足並みをそろえて取り組むのは異例。国内の鉄鋼労働者数は約18万人に上り、雇用慣習に大きな影響を及ぼしそうだ。少子高齢化の進展を見据え、他業種にも同様の動きが広がる可能性がある。
(産経新聞 4月4日)

「鉄は国家なり」と言われた時代は過去のものとなったが、鉄鋼業界は、未だに日本経済に大きな影響力を持っている。その鉄鋼メーカーが定年を65歳に延長することは、他の業界の人事制度にも影響を与えるだろう。

世界の鉄鋼市場は、中国の供給過剰によって、価格破壊が進んでおり、日本の鉄鋼業も厳しい経営環境に直面している。そのため、深刻な人手不足に陥っているわけではない。その中で、定年延長に動いたのは、60歳を過ぎた従業員が生み出す付加価値を高く評価したからだ。特に、既存設備の保守、管理には、ベテランのノウハウが欠かせない。筆者は、かつて、ある高炉メーカーの電気設備の保守作業を支援するAIの構築について、協力を依頼されたことがあるが、保守の現場では、多くの保守要員の経験の蓄積が日々の保守業務を支えていた。これらのノウハウに全く頼らないAIシステムを開発することは、容易なことではない。こうした特殊な技能が必要とされる職場では、高齢の従業員の活躍の場は、そう簡単にはなくならない。